
庭木が枝を伸ばせない本質的な理由
2025/11/21
庭木が「今年ほとんど伸びない」「新芽が弱い」という症状は、
単なる成長不良ではなく 内部の生理的トラブル が進行している可能性があります。
見た目では分かりにくいですが、樹木の内部では明確な“成長停止のメカニズム”が働いています。
1. 光合成産物(同化養分)の不足
新しい枝を伸ばすには、光合成で生成される**デンプン・糖類(炭水化物)**が必要です。
しかし次のような状態だと、
枝の成長点に回す“余剰”がなくなります。
- 葉量不足(丸坊主剪定/強剪定後に多い)
- 葉面積指数(LAI)が低い
- 樹冠が混み、透光率が低い
- 日照が遮られている
- 葉が古く、光合成能力が低下している
→ 結果:枝の伸長が止まる(シュート長が1/3以下に)
光合成産物は「新芽」「根」「幹の維持」などに分配されます。
不足すれば真っ先に“成長”がカットされます。
2. 微細根(ファインルート)の減少
根の吸収機能の大半は、直径0.5mm以下の微細根が担っています。
枝が伸びない木ほど、以下の理由でこの微細根が失われています。
- 土壌が締まり酸素不足(踏圧・粘土質)
- 過湿による嫌気環境
- 夏季の地温上昇による根腐れ
- 肥料の塩類濃度障害
- 客土層が薄く根が張れない
→ 微細根が減ると、上部の成長はただちに停止する。
特に造成地の庭では、地中30〜50cmに“締まった層”があり、
そこに根がぶつかって弱るケースが多いです。
3. 土壌のCEC(陽イオン交換容量)が低い
土壌の“栄養保持力”を示すCECが低いと、
肥料を与えても保持されず 流亡 します。
CECが低い土壌例:
- 真砂土(花崗岩風化土)
- 砂質土
- 造成地の客土
CECが低下すると、
- N・K・Caなどの陽イオンが保持できない
- 根が養分を吸収できない
- 微生物の活性が落ちる
- 結果として枝が伸びない
→ 「肥料をあげても効かない」状態になる。
4. 水分ストレスとアブシシン酸(ABA)の増加
樹木はストレスを受けると アブシシン酸(ABA) を分泌し、
自ら成長を止める生理反応を起こします。
ABAが増える原因:
- 過湿による酸素不足
- 乾燥ストレス
- 急激な温度変化
- 塩類濃度の変動
ABAが増えると…
- 気孔が閉じる
- 光合成が抑制される
- 微細根の伸長が停止する
- 成長点の細胞分裂が止まる
→ 結果:シュートの伸びが著しく低下する。
5. 剪定による「炭素収支(Cバランス)」の崩壊
木は常に、
- 収入:光合成
- 支出:維持呼吸・成長・傷口修復
のバランスで成り立っています。
強剪定をすると、
- 葉量が減り光合成量が激減
- 傷口の修復で“支出”が増える
この 負の炭素バランス に入ると、
木は“成長より生存”を優先し、枝の伸長を止めます。
特に:
- 一度に太枝を数本切る
- 丸坊主剪定
- 枝抜きしすぎ
などは 1〜2年成長が鈍化することが多いです。
6. 樹勢を回復させるための専門的対策
● ① 土壌環境の改善(最優先)
- 腐葉土・バーク堆肥でCECを上げる
- 表土5〜10cmを“有機的な層”にする
- 水はけの悪い場所は暗渠や盛り土
● ② 微細根の再生
- 踏圧部分の通気性改善
- 過湿なら排水改良
- 肥料は「低濃度・有機質」が原則
● ③ 葉量の確保
- 翌年の光合成量を確保できる剪定
- 太枝は1シーズン1本まで
- 丸坊主剪定は避ける
● ④ 樹齢・樹種に合った維持管理
若木・成木・老木で生長の優先順位が違うため、
剪定量・施肥量を変える必要がある。
まとめ
枝が伸びない庭木には、必ず 内部の生理的な理由があります。
- 微細根の減少
- CEC不足(痩せ土)
- 過湿・乾燥によるABA増加
- 剪定による炭素収支の崩壊
など、外から見えない部分で問題が進行しています。
枝が伸びない=木が生き残るために“成長を止めている”サイン です。
改善の鍵は、枝ではなく根・土壌・光合成環境。
ここを整えれば、翌年から確実にシュートの勢いが戻ります。